研究概要 |
日本の瓦生産において大きく影響を与えた朝鮮半島の様相を日本の様相と比較検討すべく,今回は道具瓦-鬼瓦と鴟尾-を取り上げた。これまで文様研究ばかりであった統一新羅期の鬼面瓦について集成を行い,データを採取して,基礎的資料を作成することを目的としている。 本年度は統一新羅期資料の大部分を所蔵する韓国国立慶州博物館をはじめとする関係機関との協議から始め,韓国国立慶州博物館・中央博物館へ赴き,調査協力の依頼を行ったうえ,各担当者と具体的な調査の進め方について打ち合わせをおこなった。 12月に韓国国立中央博物館所蔵の鬼瓦資料の調査,2月から3月にかけて韓国国立慶州博物館所蔵の雁鴨池出土資料の悉皆調査に取り掛かった。雁鴨池は統一新羅期のさまざまな遺物が大量に出土した遺跡で,統一新羅研究においても重要な位置を占める遺跡である。報告書は刊行されているが遺物の全貌はいまだに明らかでないため,遺物の一部ではあるが雁鴨池の鬼瓦の悉皆調査を手始めに行なった。雁鴨池出土の鬼瓦資料のうち約1/3の調査を完了した。データ整理も随時行っている。このデータが公表されれば今後の基礎資料となりうるものである。 韓国における古代瓦の考古学的研究はまだ端緒についたばかりであり,特に道具瓦については殆ど行われておらず,研究テーマ自体もユニークである。韓国国立博物館とのこれまでの学術交流や当館が国立慶州博物館で開催した展覧会の担当者として培った人的つながりから,今回の調査研究が可能となった。海外での調査は困難な問題が多いが,今のところ順調に調査を進めている。 国内調査は,海外での調査に比重が多かった分,今年度は着手できなかったため,次年度以降の課題としたい。
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