日本の瓦生産において大きく影響を与えた朝鮮半島の様相を日本の様相と比較検討すべく、今回は道具瓦-鬼瓦と鴟尾-を取り上げた。これまで文様研究ばかりであった統一新羅期の鬼面瓦について集成を行い、データを採取して、基礎的資料を作成することを目的としている。 本年度は統一新羅期資料の大部分を所蔵する韓国国立慶州博物館および東国大学校博物館において調査を行った。 9月および2月に行なった韓国国立慶州博物館所蔵の鬼瓦資料の調査は昨年度に引き続き雁鴨池出土資料の悉皆調査であった。雁鴨池はその存続が統一新羅期に限定される遺跡で、統一新羅期のさまざまな遺物が大量に出土した。統一新羅研究において非常に重要な位置を占める遺跡であり、瓦の出土も非常に多く、同笵関係などを追いかけながら入念な調査を行なっている。これらの雁鴨池出土の鬼瓦資料については、約2/3の調査を完了し、データ整理も随時行っている。このデータが公表されれば今後の基礎資料となりうるものであり、発表方法についても韓国国立慶州博物館と協議しつつ進めている。9月に行なった東国大学校での調査では、出土した鬼瓦笵の希少例を調査でき、多くの知見を得られた。 韓国における古代瓦の考古学的研究はまだ端緒についたばかりであり、特に道具瓦については殆ど行われておらず、研究テーマ自体もユニークである。韓国国立博物館とのこれまでの学術交流や当館が国立慶州博物館で開催した展覧会の担当者として培った人的つながりから、今回の調査研究が可能となった。海外での調査は困難な問題が多いが、今のところ順調に調査を進めている。 国内調査については、韓国瓦の一大コレクションが韓国に渡ってしまったこともあり、計画変更を余儀なくされている。次年度以降、調査にむけて努力したい。
|