本年度は九州を中心とする地域の教育委員会などを訪問し、資料の提供を受けた。資料数は24遺跡95点となった。 調査日的は、弥生時代後期〜古墳時代の墳墓から大量に出土するベンガラの形態的特徴と鉱物組成を遺跡・遺構ごとに明らかにし、編年と地域性を明らかとすることにあり、この目的に沿って以下の調査をおこなった。 (1)目視視察 ベンガラの外観を捉え、分類の目安になる特徴的な色調や粒子、原料を推定できる粒子を観察した。特徴ある部分について、デジタルカメラでスケール入りの顕微鏡写真を適宜撮影した。 (2)実体顕微鏡観察 ベンガラ中に残されている分類の目安になる特徴的な色調や粒子、原料を推定できる粒子をより細かく観察した。直接資料の表面を観察するだけでなく、合成樹脂に埋め込み資料を切断して断面をも観察し、資料を立体的に把握した。一特徴ある部分について、デジタルカメラでスケール入りの顕微鏡写真を適宜撮影した。 (3)生物顕微鏡観察 実体顕微鏡観察での特徴的な部位毎や色毎に試料をサンプリングした。複数枚のプレパラートを作成して斜光や透過光、落斜光を用いて、粒子形態を観察した。特徴ある部分について、デジタルカメラでスケール入りの顕微鏡写真を適宜撮影した。 (4)電子顕微鏡観察 実体顕微鏡と生物顕微鏡での観察結果をもとに、試料の微細形態を観察した。また付帯する微小部蛍光X線分析装置も用い、微細な粒子毎の主成分元素の同定を行った。特徴ある部分について、デジタルカメラでスケール入りの顕微鏡写真を適宜撮影し、測定データはデジタルで保存した。 (5)蛍光X線分析 実体顕微鏡での観察結果をもとに、主成分元素を測定した。測定データはデジタルで保存した。 (6)X線回折 実体顕微鏡での観察結果をもとに、鉱物組成を同定した。測定データはデジタルで保存した。 調査の過程で得たデータ類は、遺構の情報と共にデータベース化した。 来年度は調査地域を近畿・東海まで広げ、今年度の調査とあわせてデータを比較検討し、報告書を作成する予定である。
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