研究概要 |
(1)フランスの制度経済学の新展開であるコンヴァンシオン経済学の理論的研究と、それを踏まえた(2)繊維産業関連の集積地域の実態把握が研究の二本柱となった。平成18年度については、当初計画どおりこの二つを並行させつつ研究を進めた。 まず(1)について。申請者は、コンヴァンシオン経済学の翻訳プロジェクトを通じて、経済学理論を専門とする研究者が主催する研究会に参加し、研究準備を重ねてきた。2006年度の成果としては、バティフリエ編著,海老塚明・須田文明監訳『コンヴァンシオン理論の射程』昭和堂と、エイマール-デュヴルネ著,海老塚明・片岡浩二・須田文明・立見淳哉・横田宏樹訳『企業の政治経済学』ナカニシヤ書店の出版をあげることができる。次年度からは、ボルタンスキー=シャペロ著『資本主義の新しい精神』の翻訳出版に着手する。2006年9月には、日仏コンヴァンショニストの相互交流の進展に向けて、フランス・パリにてコンヴァンショニストとの研究交流を行った。 次に(2)について。イタリア・フランスにおける繊維・アパレル産業関連の企業や諸機関へのインタビュー調査が中心となった。8月末から9月上旬にかけて、イタリアのミラノや毛織物産地として知られるプラート、フランス・パリにて現地調査を実施した。なかでもパリは世界のファッション産業の中心地の一つであるにもかかわらず、関連産業の集積構造については、少なくともわが国においてはほとんど研究蓄積が得られておらず、今後研究を深化させる意義は少なくない。今回は、商工会議所、日系商社、アパレルメーカー、縫製工場、デザイナー、クリエータ、教育機関、等々に対し幅広くインタビューを実施し、今後研究の足がかりを作るような調査となった。成果は12月の人文地理学会で報告するとともに、雑誌論文等(「ファッション産業-経済、文化、社会の接点」『都市経済政策』にも使用されている。
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