研究概要 |
理論的研究は,コンヴァンシオン経済学(EC)の翻訳作業を進めるとともに,仏語文献の読解を通じた理解の掘り下げを行った。加えて,ECの知見を産業集積研究に拡張する試みを行った。近年の集積研究では,制度と,知識,学習,イノベーションに関心が寄せられている。そのうち,代表的な二つの集積理論-イノベーティブ・ミリュー論と「生産の世界」論-を取り上げ,ECに依拠しつつ,理論的な比較研究を行った。従来,列挙的に整理されてきた制度論的な集積論の理論的な基礎を掘り下げ,その共通性と異質性を明らかにした。また,「生産の世界」論の問題構成をECの研究プログラムから示した。その成果は,『経済地理学年報』に掲載されている。また,水野と共同で,イノベーションに果たす近接性の役割に関する議論と,ECの接合を図った。この成果は,『進化経済学論集』に掲載されている。 実証的研究は,前年に引き続き,イタリア・フランスのアパレル・ファッション産業の調査を実施した。イタリアはビエッラという高級毛織物産地の企業を数社訪問し,当産地の実態と,テキスタイル企業が高付加価値製品を生み出す要因についてヒアリングを行った。パリでは,デザイナー・パタンナーを中心にヒアリングを行い,欧米におけるファッション産業のさらなる実態把握を行うことができた。また,大阪を事例に,都市型の製造業集積地域の実態把握を行い,産業集積発展の一般的なメカニズムに関する知見が得られた。
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