研究概要 |
第一に,地方圏における若年不安定就労者の実態と,就業支援の実情について分析した.具体的には,大分県が県内企業とそこで働く若年不安定就労者を対象に行ったアンケート調査の個票の貸与を受け,二次分析をおこなった.また,大分県内にある6ヶ所の若年者就職支援施設(ジョブカフェ)において聞き取り調査を実施し,利用者の属性や求人・求職の状況,就業支援の実態を把握した.その結果,若年者の希望と求人内容が質的にミスマッチを起こしていること,雇用者や顧客のジェンダー意識や自動車免許を取得できる経済力の有無といった,必ずしも本人に責任を帰すことができない理由から,不安定就労状態に陥っている若年者が存在することなどが明らかになった.その成果は,雑誌「季刊地理学」に発表した. 第二に,アンケート調査および聞き取り調査に基づき,大都市圏における若年者の居住地選択や職場の分布が地域構造・都市構造に与えた影響を検討した.開発から40年近くが経過した千葉県の住宅地では,郊外第二世代のほとんどはより都心に近いマンションなどに転出している場合が多い.一方,東京駅から30分県内の駅に近接したマンションでは,東京圏出身者と東京圏外出身者が約半々であった.このことから,世代交代が郊外における人口減少につながっていること,都心周辺部での人口増加には,郊外からの人口流入と東京圏外からの流入人口の滞留の両方が寄与していることが明らかになった.その成果の一部は,日本地理学会春季学術大会において報告した.また,今後,若年者の居住地選択や仕事や職場の分布が地方都市の構造に与えた影響を分析するに先立ち,大分市内で小規模なパイロット調査を実施した.
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