研究概要 |
若年者の仕事に関しては,大分県内の工業高校卒業生(男性10人)と商業高校卒業生(女性20人)に対してインタビュー調査を実施し,職業キャリアを中心に彼らのライフコースを包括的に分析した.工業高校の卒業生は高校卒業と同時に製造業の大企業に就職している場合が多いが,職業教育の内容と仕事内容は必ずしも関連しておらず,仕事の厳しさや人間関係の難しさから離職率が高かった.商業高校の卒業生は,地元中小企業の事務職に就職する場合が多い.彼女たちは初職に勤続することが多いが,キャリア形成の展望を描くことが難しいこともあり,結婚や出産で退職することを想定していた.こうした調査結果は,専門高校のカリキュラムが若年者のライフコースの安定化にどの程度貢献しているのかを議論する基礎資料となる.また,今後の研究の方向性を模索するため,若年者の新しい働き方として,海外での就業と在宅就業について予察的な調査・研究を行い,研究発表を行った. 研究代表者は,18年度に東京大都市圏において高度成長期に開発された2つの郊外住宅地において,子世代の社会属性や居住動向を比較する調査を実施した.そのデータを分析した結果,親世代ではわずかであった社会階層の差異が,子世代では拡大していることが明らかになった.これは,均質な住民像に特徴づけられてきた郊外住宅地が,世代交代に伴って均質性を喪失しつつあることを示した点で重要である.その成果は20年度に雑誌人文地理に論文として掲載されることが決定している.東京大都市圏と同様の傾向が地方都市の郊外でも見られるか否かを検証するため,アンケート調査を大分市内の2つの郊外住宅地において実施した.
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