研究概要 |
本研究は, 既存ストックの再生を目指す公的な都市更新事業が実施されるとともに, 市場原理による住宅への再投資が進むドイツ・ミュンヘン, および1990年代以降に市場主義経済のもとで都市更新が進められているポーランド・ポズナニを事例として, 都市の形態的・社会的変容という観点から, 都市更新の持続的な展開に必須となる地域的要因を明らかにすることを目的とする。 平成20年度において, ドイツで統計資料と関連情報の収集を行うとともに, ポーランドのポズナンにおいて情報収集ならびに事例地区での土地利用調査を実施し, さらに研究成果の一部を国際学会および国内学術雑誌等で公表した。 まず, ポズナン市における主な調査結果は次の通りである。(1)公的事業である都市再生事業や国内外からの直接投資に基づいた商業施設更新を通じて, 都市空間が社会的・経済的に大きく変容している。(2)とくに中心商店街は, 旅行代理店や喫茶店といったサービス業や金融関連の店舗数が増加するなどの消費者ニーズに沿った活発な業種転換がみられ, 地域経済の中心として土地利用と景観が著しく変化している。(3)ただし,都市再生事業の実施件数は少数で, インフラ整備が中心で, EUからの補助金に大きく依存する。 また, チュニスにおいて開催された国際学会においてミュンヘンでの調査結果を事例に基づいて報告したところ, 研究の位置づけをより明確にし, 他都市との比較を念頭に置いて議論を進めるべき等の指摘を受けた。
|