本研究は、既存ストックの再生を目指す公的な都市更新事業と、市場原理による住宅への再投資が進むドイツ・ミュンヘン、また1990年代以降に市場主義経済のもとで都市更新が進められているポーランド・ポズナニを事例として、都市の形態的・社会的変容という観点から、都市更新の持続的な展開に必須となる地域的要因を明らかにする。ミュンヘンでは1970年代以降に都市再生政策が本格的に導入され、都市更新事業などの複数の施策が実施され、既成市街地が面的に改善されていった。建築物の形態的側面では、都市更新事業の実施区域や、都市政策上の重点開発地域を含めた都心周辺において都市再生が活発である。こうした都市再生政策の実施を契機として、衰退地域が居住地としての魅力を回復させた。一方、ポズナンでは、都市空間が社会的・経済的に大きく変容しており、こうした変化は公的事業である都市更新事業や国内外からの直接投資に基づいた商業施設更新により引き起こされている。とくに中心商店街では、消費者ニーズに対応した業種転換が活発であり、景観が急速に変容するだけでなく、人口構造も大きく変化している。ただし、都市更新事業はこれまで実施件数はわずかであり、事業実施にあってはEUからの補助金に大きく依存しているという課題も明らかとなった。
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