本年度は、パりのシャトー・ルージュと呼ばれる地区で行われている都市計画事業について調査を行った。ここはグット・ドールと総称されることもあるが、パリ18区にある移民集住地区であり、特に北側のサハラ以南のアフリカ出身め移民が多い地区をこめ名で呼ぶ。2002年から行われているパリ市の不衛生住宅事業においては、ここに最大規模の介入が行われている。本年度夏期休暇中の調査では、その具体的な内容を公開されている資料から明らかにするとともに、事業者にインタヴューを行った。 結果として、行政はこの地区の過密居住を問題にしながら、当該住民にそれを解消するために必要なサーヴィスを提供することができていないこと、また非正規滞在の移民をこの事業によってあぶりだし、強制退去させたケースがったことを明らかにすることができた。事業は、住民を精査し、選別するシステムとしても機能しているのである。この研究成果は、5月刊行予定の本に掲載される予定である。 また、この3年間の研究成果について、8月にチュニジアで行われた国際地理学会で報告を行った。内容としては、現代パリの都市景観形成についての考え方は、マレ地区における歴史的街区保存事業を通じて方向付けられたこと、またそれが住民め社会構成などにも影響を与えていことである。シャトー・ルージュの事業もこの考え方の一部に位置づけうる。この成果については、A4で200枚程度の原稿にまとめ、現在一橋大学社会学研究科の博士論文として審査してもらうよう、手続きをすすめている。
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