本年度は昨年度までの蓄積を踏まえて、東京・岐阜・那覇におけるフィールドワークを集中的に行なった。その結果、不足していた資料を入手し、また現状を把握することができたので、早い段階で資料の分析、論文の執筆に取り掛かることができた。まず、東京・岐阜についてであるが、戦災の状況、復興の計画と実際の過程、そして都市計画との関わりを踏まえて、特殊飲食店街の形成過程をつぶさに検討した。ここで明らかになったことは、戦前の遊廓に象徴される集合的な公娼制度が米軍の占領下においても巧みに継続され、戦前以上に集娼地域が増えたことである。こうした戦前-戦後の連続性についてはこれまでほとんど明らかにされておらず、平成20年度に成果を公表(書物として出版)する予定である。また、これまで確認されてこなかった「東京パレス」、岐阜の「手力園」といった特飲街の所在を空中写真で発見したことも大きな成果である。 さらに那覇については、米軍統治下で進められた土地の段階的開放にともない、市街地が新たに建設されていく過程を分析した。いまだ資料の制約があるためその全貌は詳らかでないものの、本研究の目的である「場所の文化ポリティクス」という点では、「歓楽街」と称される場所がまさに米軍と琉球政府による折衝の焦点となり、民意を糾合しつつ、あらたな景観が形作られてゆく過程を言説分析から明らかにし得たことは、次年度に向けても大きな成果となった。 また、東京については別の側面(露店問題)にも注目し、年度末から資料の収集、分析を開始した。これは次年度で引き続き検討する予定である。
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