研究概要 |
我が国製造企業の先端的技術開発に着目し, 企業内の研究開発や生産の再編が事業所立地にどのような変化をもたらしているのかという点を明らかにするとともに, 企業の範囲を超えた部門間連携や域内リンケージが地域的集積やクラスターといかなる関連性を有しているのかという点について事例研究から問題点を抽出した。主にエレクトロニクス産業に焦点をあて, 半導体デバイス産業と薄型テレビ産業における技術開発の動向と立地変動を空間的分業論と集積論の枠組みのなかで説明することを試みた。両産業において東アジア各国・地域での競争が激化しているおり, 2000年代に入って増産の傾向が著しく, 特定の立地地域への投資額が増大するなど, 集積やクラスターの役割が高まっている。また, 設備投資や研究開発のウェイトが高まっていく1990年代中頃から現代までにおいて, 企業の範囲を超えた共同研究や産官学連携などの研究開発活動が地域的集積やクラスターの発展と密接に関連し, 研究開発機能の再編のなかで, 研究開発活動の地域的集中が生じている。特に, 知識ストックがもたらすスピルオーバーや対面接触にもとつくコミュニケーションの重要性が増しつつあり, 定性的および定量的な分析から非市場的相互作用に関わる外部経済の存在が大きくなっていることが示唆された。この点は, 立地調整の加速化を可能にする一方で, 技術開発の促進や向上に影響する, 事業環境としてのクラスターや集積の存在が国際競争力に寄与している。
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