研究概要 |
本年度は,昨年度に引き続き家畜預託及び世帯経済分析に関わる民族誌調査を収集すると共に、サハの家畜預託の特徴と、その人類学上の意味に関する理論的考察を行い、研究発表した。 年度前半においては、昨年度(2007/9-10)及び別の研究プロジェクトで補足的に収集した(2007/3-4)民族誌資料の整理と分析を行った。特に質問紙に基づくサンプル数はこの2回の調査で200近くになり、十分定量的分析に耐えうる数となった。臨地調査においては、調査地の天候状態から当初予定していたヴィルイ群での質問紙を用いた社会調査は断念したが、もう一つの目的であるハンガル群においての臨地調査は実施した。家畜預託の理由である当歳馬の「大量畜殺」の現場で参与観察できたのは大きな収穫だった。 その調査データを用いて、11月の研究会において「ポスト社会主義下におけるサハ人の牧畜生産の市場経済適応:「二重経済」概念をめぐる-考察」ができた。なおこの発表内容は来年度論文として刊行される予定である。また国際極北社会科学会議はさらに延期となり2008年8月に実施されるが、そこにおいて本研究の成果を発表するための手続きを行った。発表原稿は、下訳を業者におこなってもらい、それを下に自分で書き直し草稿を作成した。2月下旬に発表登録を行い、現在はそのスクリーニングの最中である。 また昨年度9-10月に収集した民族誌資料をもちいて、ロシア連邦サハ共和国オレニョク郡における家畜経営と市場経済の関係を、当該地域の貴金属開発(ダイヤモンド)及び気候変動を加味しながら分析した報告も行った。その成果も現在印刷中であり、2008年4月中に印刷される予定である。
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