研究概要 |
今年度は研究プロジェクトの開始にあたり,研究の様々な工具類(パーソナル・コンピューターや基本書籍)の整備から始めた。ソ連時代の全体的状況を考察すべく,ソヴィエト社会学の基本文献(英語とロシア語)の選定と購入にあたった。反省点として,想定していた以上に文献の購入に予算がかかり,結果として海外出張が不可能になったことがある。この反省は次年度に生かす。本務校の図書室で,「ソヴィエト民族学」誌の目次を収集した。欠号分については,民族学博物館にて収集し,全号を網羅した。ソヴィエト初期に於けるソヴィエト民族学の勃興について,資料収集できたのは特に有益であった。時代毎に主要テーマの変遷について分析を行った。「社会学研究」誌については,テーマのグループ化の作業はまだ半分であるが,他の1910年代のロシア社会学の基礎資料とともに,北海道大学スラブ研究センターにて収集した。これについては,今年度ではまだ終了していない。今年度とくに研究の重心を置いたのは,ロシアがソヴィエト連邦になる過程に於ける社会学および民族学の変遷である。その結果,社会学であればM.コヴァレフスキイ,P.ソローキン,民族学であればシュテルンベルグやタン=ボゴラーズらの立論(とりわけ独立した学の形成に於ける論理)の大枠が解析できた。どちらも,新生ソヴィエト体制に限定づけられながら,西欧の対応物とは異なる路線を模索していた有様が明らかになった。この成果は後に,まずロシア史研究会研究大会で公表するつもりである。
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