本研究の目的は、ポスト社会主義期エチオピアの最大の懸案となってきた土地所有体制について、国家の土地政策とローカル社会での土地利用実践とがどのような相互作用のなかで再編成されてきたのか、その過程を実証的に明らかにすることにある。二年目である平成19年度は、約1ヶ月間のエチオピアでの現地調査をもとに、(1)土地不足に陥った農村社会の生業戦略の変化、および(2)土地利用実践の変遷について、重点的に調査を行った。(1)については、ポスト社会主義期の1990年代より急速な土地不足が進行し、農民の生業戦略が脱農業化の方向に大きく動いていることがあきらかになった。とくにアラブ諸国への若年女子の出稼ぎが顕著になり、調査村でも30人あまりの未婚女性がUAEやスーダンをはじめとしたアラブ諸国に出稼ぎに出はじめ、海外からの送金が重要な収入源になりつつあることがわかった。(2)については、村の土地利用図の作成から、これまで耕作が困難であった低湿地などがあらたに分配され、雨季の食糧確保のための重要な農地となっていることがわかった。最終年度である平成20年度には、こうした調査成果をもとにポスト社会主義期の15年あまりのあいだに農村社会が経験してきた変化の動態をエチオピア政府の土地利用政策や農村部の土地利用実践の変化のなかに位置づけて分析する。
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