本年度は、本研究課題の最終年度にあたるため、これまで2年間に収集した調査資料をもとに、おもに以下の3点について分析を行い、ポスト社会主義エチオピアの土地政策と土地利用実践との関係について考察した。(1) エチオピアの90年代以降の土地政策とそれをめぐる議論の変遷について、(2) 農村部の土地利用実践の変化について、(3) マクロな政策・市場などの外部要因と農村内部の変化との相関関係について。(1) については、エチオピアで開催された複数の土地政策をめぐるシンポジウムでの資料から、繰り返し土地の私有化を求める議論がなされてきた一方で、その弊害を主張する議論も多く、コミュニティの管理を基本とした土地政策を進める穏健的な政策が支持されてきたことがわかった。(2) については、90年代末から2000年にかけて調査した土地利用との比較から、低湿地部分に残されていた未利用地のほとんどが分割されてきたものの、その一部は、水はけなどの条件の悪さからすでに耕作が放棄されている場所もあることがわかった。さらに、もっとも最近に分割された低湿地の土地は、若者が新たに組織した耕作集団を対象に供与されていた。(3) については、未利用地の消滅と人口増加という状況が2007年度の調査から判明したアラブ諸国への出稼ぎ増加につながっている可能性がみえてきた。ただし、とくにアラブ諸国への出稼ぎは、かならずしもまだ農村部への現金の流入など明確な動きがでていないため、今後も状況の推移を確認していく必要がある。3年間の研究をとおして、土地不足や人口増加、コーヒー栽培の不安定化などを背景にエチオピアの農村社会から海外への出稼ぎが急増するなどグローバルな変化が起きている状況が明らかになった。
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