理論面においては、出版手続きが進行中の論文「地域通貨:社会に埋め込まれた経済、再び?」(『人類学で世界を見る』所収、ミネルヴァ書房より2008年に出版)をもとに、さらに理論的検討を進めた。同論文をたたき台として関係研究者と議論を深め、京都人類学研究会とともにシンポジウム「経済人類学の新機軸:『社会に埋め込まれた経済』から問い直す」(2007年12月15日於京都大学)をオーガナイズしてその成果を公表した。同シンポジウムにおいて総合コメントを行った。この場では、本研究の中心概念となる「離床」「再埋め込み」などの概念の意義について議論が深められた。 調査においては、フランス南部のアルプ・ド・オート・プロヴァンス県における「連帯食料品店」において、2007年8月29日から9月30日にかけて現地調査をおこなった。同調査では、以下の点を重点的に調査した。(a)調査地域における食糧支援網の全体がどのように組織化されているかを調査し、ネットワークのなかで対象とする「連帯食料品店」がどのような位置づけにあるかを検討した。(b)「連帯食料品店」の参加者に対するインタビュ」によって、参加者のライフヒストリーを聞き取り、「連帯食料品店」における交換をどのように理解しているか調査を進めた。特に二点目に関して、昨年度までの調査データをもとに論文「ずれた未来を垣間見る:フランスにおける「組み込み」政策の周辺で」(『ポスト・ユートピアの人類学』所収、人文書院刊)を執筆し公刊した。
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