最終年度である本年度は、これまでの研究の成果を受けてフランスにおける連帯経済の生成に関する研究を理論面および調査面の両面において発展させた。その成果を研究論文として最終的にまとめ、発表した。 (1)アクターネットワークセオリーの立場からの経済研究、およびコンヴェンション・スクールの研究を中心として文献研究をおこなった。それによって、これらの研究のキー概念である「装置(dispositif)」概念を人類学的研究がどのように利用できるか、および装置に関与する人々の経験を民族誌的研究がどのように取り扱うことができるかについて、理論的に検討し考察をまとめた。 (2)2008年9月10日から10月11日にかけて、フランス、アルプ・ド・オート・プロヴァンス県の「連帯食料品店」において、これまでの調査を補い発展させるためにフィールドワークを行った。調査は、(a)「連帯食料品店」での交換活動についての参与観察と聞き取り、(b)参加者のライフヒストリーおよび「連帯食料品店」での交換についてのインタビュー、を中心に実施した。 (3)上記の理論的検討の成果と過去三年間の調査データをもとに、研究課題を総括する論文「不確実性のゆくえ : フランスにおける連帯経済の事例を通して」を執筆し、『文化人類学』に投稿した。同論文は73巻4号に採択決定され、現在印刷中である。また、研究の過程において明らかになった知見を、二本の論文(「地域通貨 : 社会に埋め込まれた経済、再び? 」、「フランスの相互扶助アソシエーション」)として発表した。
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