今年度では、マレーシアを中心とする諸徳教団体の理論強化をめぐる展開、徳教のトランスナショナルな展開とネットワークの構築について研究を行ってきた。 諸徳教団体間では、従来徳教の教団展開路線や、教団イデオロギーをめぐる論争が存在している。近年徳教の組織的拡大と同時並行の形で、そうした論争と同時に、理論強化に向かう数々の試みが展開されている。そうした展開は、徳教をめぐる状況の変化や徳教の主な担い手である商人階層の上昇志向と連動するものである。今年度の調査では、近年諸徳教団体の推進している理論強化の背景と具体的な状況について関連のデータを収集し、分析を行った。 徳教のトランスナショナルな展開とネットワークの構築については、マレーシア以外、タイ、シンガポールにおいても調査を展開し、各国徳教団体の相互連携の強化、東南アジア外部への布教の状況を把握した。そこで明らかになったのは、ネットワーク化と組織の拡大性が徳教の性格の重要な一部であり、それが徳教の存在形態ともいえることである。今後、上記の問題点について更なる調査を展開し、徳教の展開と人々の実践をより厚い文脈において捉えていくことを目指す。
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