平成20年度においては、移民と宗教の理論的分析枠組みを固めた上、マレーシアの華人による徳教創出の過程、移民と宗教のダイナミックな相互交渉のプロセスを明らかにした。 まず、徳教と潮州系華人、ならびに全体の華人コミュニティとの関係性について、マレーシア全体の状況を視野に入れながら、ペナンを中心に関連のフィールド調査と分析を行った。そこで、徳教は潮州系華人を中心に信者を集めながら、全体の華人コミュニティにおいてもその影響力を拡大してきたという状況が分かり、その具体的なプロセスについて分析を行った。 また、徳教の主な支え手となる商人階層について、かれらの生活体験、徳教とのかかわり方などを分析し、徳教と商人階層との相互関係、両者の間における交渉の実態を明らかにした。 最後に、マレーシア、シンガポール、タイなどの諸徳教団体間の相互連携、交流の実態を視野に入れながら、マレーシアにおいて、潮州系を中心とする商人階層がいかなる状況の中で、どのようにして徳教を教団として創り上げてきたのかというプロセスとその実態をまとめ上げ、関連の分析を行った。平成20年度をもって、徳教に関する本研究は完了することになり、今後においては、これまでの研究実績を踏まえ、徳教に関する学術書を出版することをめざしたい。
|