研究概要 |
本研究は、20世紀前半にドイツで活躍したグスタフ・ラートブルフ(Gustav Radbruch, 1878-1949)とヘルマン・U・カントロヴィッツ(またはカントロヴィッチHermann U. Kantorowicz, 1877-1940)の交友関係を、彼らが交わした手紙の読解等を通して明らかにすることを目的とするものである。本年度(2008年度)は、昨年度に引き続き、カントロヴィッツのラートブルフ宛手紙(一昨年度にドイツのフライブルク大学とバイデルベルク大学図書館で複写したもの)の読解を進めることを中心に研究を遂行した。その結果、とくにラートブルフの主張は、当時の新カント派などの思想を利用しつつも、それを逸脱してしまっている部分があるので、ラートブルフの主張を理解するためには、当時の思想枠組みを参照するだけでは不十分であると考えるに至った。そのため、とくに様相論理学や義務論理学などの現代論理学や、J.L.オースティンやJ.サールなどの言語行為論の知見を利用し、さらに、ラートブルフと同様の主張を現代の思想枠組みに基づき行っているR.アレクシーの学説と比較することにより、カントロビィッツやラートブルフの思想をより明確にする、という方向に研究の重点を置くことにした。その成果は、2008年9月22日に中国・長春で開催された第7回東アジア法哲学会で報告するとともに、2009年度の科学研究費補助金申請(若手B、研究課題名「法概念の論理的分析」)の内容にも反映した(交付内定済み)。
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