平成18年度は、本研究が総体として目的とする「従来の「自律的個人主義」を前提とする自律型の権利論では理論的正当化の果たし得ない権利概念を抽出し、これらの権利概念を「関係性の権利論」という関係基底的権利論によって理論的に明示」することに専心し、理論的枠組みを提示した。その成果は、「法は人の生lifeを如何に把握すべきか--Martha Minowの関係性の権利論を手がかりとして--(一)〜(四)」(千葉大学法学論集21巻1〜4号)に示される。この成果を提出するに際しては、東京法哲学研究会及び法理学研究会、更には終末期医療に関する勉強会に参会し、法理学研究会に於いては6月24日(同志社大学)、終末期医療に関する勉強会に於いて6月3日(上智大学)報告を行い、人間の生死の領域で法が如何なる意味を持ち得るかという点につき、参会者との議論の中から有益な知見を得、成果に反映することが出来た。ここでの知見は、ヒト胚という人間の生の始まりの問題を扱う上でも重大な意義を持つものであった。 さらに本研究の副題であるヒト胚研究規制の正当性については、各国の研究規制を巡る制度形成過程及び制度状況については、Stephan Post編Encyclopedia of Bioethics第3版の翻訳書である生命倫理百科事典翻訳刊行委員会編『生命倫理百科事典』(全五巻)所収の「Embryo Research胚研究」を担当し(第四巻大項目77小項目2、2424-2434頁)、オーストラリア、英国、米国について検討を行った。 当初予定していた国外雑誌文献については、インターネット上で入手することが可能となったことに伴い、別途国内外の文献の購入ないし複写等を行った。
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