本年度は、消費生活センターにおける相談業務に関して、相談員及び職員に対する聞き取りを中心に研究を進めた。当初は、複数のセンターにおける聞き取りを予定していたが、本研究課題の初年度ということもあり、今後の分析に向けた指針を定めるため、調査対象をひとつのセンターに絞り、重点的に聞き取りをおこなった。その結果、以下の知見がえられた。 1.センターに寄せられる相談件数の増加に伴い、全国的傾向として、あっせんによる処理件数は減少している。しかし、現場の相談員は、依然、あっせんによる処理への志向を強く有している。そこで、相談員は、相談者の属性(高齢、障害の有無、等)、相談の内容等、何らかの判断基準をもとに、あっせんすべき案件の選別をおこない対応している。 2.消費者契約法の制定をはじめとした、消費者関連法の整備に伴い、消費者相談における法律の守備範囲が拡大している。そのなかで相談員は、法律知識の重要性を認めつつも、自らの業務は「法律相談」とは異なる独自の紛争処理であると理解している。 3.上記2点に関して、当該センターの相談員のあいだでは、案件を選別するための何らかの基準が共有され、また、法律家ではない、「相談員らしい」紛争処理が、何らかの方法で実践的に達成されていると考えられている。 以上の知見を踏まえ、次年度は、さらに聞き取りを重ねるとともに、できればセンター内でのフィールドワークを通じて、上記判断基準の解明や相談処理実践の詳細な記述を試みたいと考えている。また、センターの組織内環境(相談員の数、商品テスト室の有無、等)及び組織外環境(弁護士及び弁護士会との連携、等)が、相談員による業務にどのように反映されるのかを解明するため、他のセンターでの聞き取りも実施する予定である。
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