昨年度に引き続き、消費生活センターにおける相談業務に関して、相談員及び職員に対する聞き取り調査を中心に研究を進めた。本年度は、同一県内の異なる市にある2つのセンターにおいて調査を実施した。その結果、昨年度の調査結果との比較も行いつつ、以下の暫定的な知見を得た。 1.いずれのセンターにおいても、相談員の間では、相談案件への対応について何らかの基準が共有されている。またそれは、法律知識を背景とするものの、相談員は「法律家」ではないという自己認識から、「相談員らしい」対応といえるものが何らかの方法で実践的に達成されている。とくに、相談者の話を「聞く」ことの重要性が各相談員から繰り返し語られた。 2.消費者が巻き込まれるトラブルへの対応として、社会福祉協議会、警察、消費者団体等、官民のネットワークでの対応の重要性が、とくにセンター職員より指摘された。ただし、そのネットワークは、センターを取り巻く環境によって異なる。本年度の調査対象についてみると、一方は、相対的に弁護士の多い県庁所在地にあり、県のセンターも近接するという条件から、同一県内においても違いがみられる。しかし、それが具体的に相談実践にどのように作用するのかについては、今後の検討課題である。また、いずれのセンターにおいても、消費者団体に関して、その重要性とともに、メンバーの高齢化等による団体の弱体化が問題として語られた。 以上の点を踏まえ、次年度も異なる地域(弁護士が多数存在する大都市、消費者行政に積極的に取り組む自治体等)での聞き取りを重ねる。さらに、懸案となっているセンター内でのフィールドワーク、実際の相談場面の録音・録画を通じて、相談業務の詳細なデータを収集し、とくに上記第一の点について、相談員による問題対応の特質を明らかにできるように努めたい。
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