3年間の最終年度である本年度も、これまで同様、消費生活センターにおける相談業務に関して、相談員及び職員に対する聞き取り調査を中心に研究を進めた。本年度は、同一県内の異なる市にある2つのセンターにおいて調査を実施した。ともに県内では相対的に弁護士数の多い地域であるが、一方は県のセンターであり、さらに弁護士が多数存在する地域に近接するという立地上の相違がある。こうした調査の結果、これまで収集したデータとの比較も行いつつ、以下の知見をえた。 1. 相談者に対する聞き取りの中で3年間繰り返し話題となった2つのテーマとして、相談業務における「聞く」ことの重要性、近年の「消費者の変化」がある。とくに後者は、いわば「エゴイスティックな消費者」の増加として語られるが、他方、高齢者や若年者といった「弱い消費者」には支援が必要と認識されている。こうしたことから、相談者の語りを聞くなかで行われる消費者カテゴリーによる分類が相談員の処理方法と結びついているのではないかと考えられる。 2. 法律専門職と異なる相談員の専門性は、法律に対するその独特なスタンス、すなわち、法律の下で業務を遂行しつつ、法律の拘束から抜け出そうとする志向性に求められるのではないかと考えられる。 さらに本年度は、上記調査とデータの分析に加え、学外に向けて本研究の成果の一部を公表する報告会を開催した (2009.2.7) 。しかし、懸案であったセンターでのフィールドワークは実施できなかった。引き続きその実現に向けて努力したい。消費者行政の領域は近年めまぐるしく変化を続けている。そこで、これまでの調査データ全体の分析をできるだけ速やかに公表するとともに、その大きな流れを内側から解明できるよう今後も研究を続けていきたいと考えでいる。
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