研究期間の初年度に当たる平成18年度においては、研究計画に掲げた目標のうち、ほぼ全てを達成することができた。すなわち、権利保護訴訟と民衆訴訟との間に位置する制度保障訴訟の出訴適格を基礎づける「不特定多数者の法律上の外延」について、明治期から現代に至るまでのわが国の実定行政実体法を逐一精査するという丹念な作業を経た上で、その全てを比較・検討し、評価・分類を行った。このような方法論は、これまでの先行研究に類をみなかったものである。さらに、かくして得られた解釈論上の所見を立法論にまで敷衍し、いまだ試論の域にあるとはいえ、「申請者以外の者に係る許認可等手続の改善を図るための関係法律の整備に関する法律案」として、その実践的方向を呈示した。これによって、わが国の行政法学において長年難問とされてきた「第三者の原告適格論」に終止符を打つことができたと考えている。以上の成果は、直ちに単行本(後掲『公権力の行使概念の研究』)として発表された。
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