平成19年度では、前年度の研究成果に基づいて、中国西南地域の国有企業改革に焦点を当て、研究を更に進めてきた。その成果は、次の点に要約できる。 第一に、西南地域国有企業の特徴として、その生成と発展の歴史から見れば、(1)いずれも新中国建国後の第1次5カ年計画、とりわけ「三線建設」時代につくられたものである。(2)これらの国有企業には、伝統型の資源生産・加工及び重工業(特に軍事関連産業)に集中するという傾向がある。(3)今日では立地条件の不備や伝統産業からの脱皮や余剰人員の処理等似通った課題を抱えている。 第二に、西南地域国有企業改革の難点として、(1)設備更新、余剰人員の再配置、年金、累積債務などの費用の出所、(2)技術者の減少、労働者の教育水準、(3)保守的な意識、(4)党や政府の関与、(5)法律の整備不足などが指摘できる。 第三に、改革の方向として、(1)生産性の低い国有企業の整理再編、(2)株式会社化によるガバナンスの向上、(3)民営企業や外資企業の育成、(4)積極的な情報公開、(5)法律の整備等が挙げられる。 第四に、本研究を通して得られた知見として、(1)中央政府による財政支援というマクロ的アプローチ、(2)沿海地域の経験を学ぶことと改革を担う人材育成というミクロ的アプローチが必要なのではないかということである。 第五に、今後の課題として、上記の研究成果を生かして、(1)調査対象を更に広げること、(2)行政法の見地から研究を昇華させることである。 ちなみに、上記の研究成果を取り入れて書いた拙稿「西南地域の国有企業改革」(岡本信広編『中国西南地域の開発戦略』所収<アジ研選書10>ジェトロ・アジア経済研究所)は、2008年3月より公表中である。
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