研究概要 |
本年度は,以下の点について,相互承認原則の位置づけに関する検討を行った。 第1に,国際親子法の分野におけるわが国および諸外国の立法動向について比較法的検討を行い,代理母から生まれた子の親子関係の問題などに関して,準拠法アプローチと外国判決承認アプローチについての相違点の再確認を行った。この成果は論文として公表した。 第2に,全面改正されたわが国の国際私法(法の適用に関する通則法)の不法行為に関する規定の解釈論の検討作業の過程において,同様に最近立法を行ったEUのいわゆるローマII規則の比較法的検討を行い,そこにEU法における相互承認原則の影響が現れていないかについて確認した。検討結果は,立法過程においては議論があったものの,そのような影響は原則として制定されたローマIIには見あたらないというものであった。この成果は,学会発表した上で,日本語論文として公表した。また,この研究を基礎とした英語論文も公表した。 第3に,研究最終年度である翌年度における研究のまとめの準備作業として,EUにおける相互承認原則とその派生原則ではないかとの議論がある本源国法主義に関する議論の検討を行った。その際には,伝統的な議論のほか,最近の欧州司法裁判所の判例に見られる,法人や氏名についての,新たな相互承認原則の現れについても調査した。この成果は,研究最終年度に総括として公表する予定である。
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