本年度は、国内法秩序における国際法規範の「間接適用」の事例収集・検討と、関連する国際法・国内法二次文献の収集・分析を中心に行った。日本でも比較的検討が進んでいる米仏独の文献資料からまず取り組んだ。 「国際法と国内法との関係」に関する二次文献に採り上げられている「間接適用」事例を収集するほか、次のような手順で網羅的な収集に着手した。まず、British Year Book of International LawやAnnuaire franCaisde droitinternationalのような、国際法に関係する各国国内裁判例および立法府・行政府の実行が整理されている年鑑・雑誌類を用い、関連する裁判例・事例を調べた。そして、とりわけ英・仏の国内法の関連文献を精査し、国内法規範の解釈にあたって国際法規範が参照された裁判例・事例を調査した。まず、比較的調査が容易と推測される憲法(特に人権)と国際私法(国際民事訴訟法含む)の公序則の解釈について、調査に着手した。 国内裁判例については、上記の方法により見つけられた裁判例を手がかりに、LexisNexis(米英)・Jurisclasseur(仏)・Juris(独)などのオンラインデータベースを用いて、調査を進めた。 上は国内法の側から見た調査である。国際法の側から見た調査としては、市民的及び政治的権利に関する国際規約人権委員会のいわゆる"jurisprudence"について、コモンロー諸国に対して否定的な見解が述べられた事例を包括的に調査し、それが国内法解釈に与えた影響を検討した。
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