平成19年度においては、日本における現状に至るまでの規制改革の変遷、それぞれの時代における産業構造、競争状況等を分析した。また、米国における航空産業についての航空需要のパターン等について主に文献にもとづく検討を進めた。 米国については、需給の規模やパターンに影響を与えるような社会的慣習や消費者行動の傾向等を分析し、航空市場競争へどのような影響を与えているか、について検討を行った。平成19年度末時点でも検討を進めており、まだ明らかなことは言いがたいが、広大な国土を有する米国においては、航空輸送は交通手段としての重要性が高く、需要のパターンや鉄道等との競争関係が日本とは異なりうることがわかった。部分的に競争が見られる短距離輸送と、長距離輸送とでは競争関係を分けて分析する必要がある。さらに、消費者行動についても、貨物輸送等の大口需要と旅客輸送等とで相当に差異があり、また旅客輸送については、ビジネス需要と旅行等のレジャー需要とで相当に需要パターンが異なっており、この両者について料金体系も著しく異なっている。学説上、需要者ごとに異なる料金については特に規制によるべきではなく、経済学上の価格差別によって資源配分上の効率を達成するとされているが、日本における参入状況、競争状況を見ると寡占的価格協調に陥っており、それが競争の結果とも必ずしも言い難いことから、競争促進策が必要ではないかと考えられる。このような観点から、次年度は、料金規制ではなく、競争促進策としての法制度のあり方について、研究を深めたい。 以上の研究について、平成19年度は文献調査を主に進めた。都合により渡米してのインタビュー調査等を実施できなかったため平成20年度にその分の予算を組んで、実施したいと考えている。他方で、その分を文献購入費に当てることができたため、多くの文献に接することが可能となった。これらについては現在も読み進めている。インターネット・ホームページ等を通じた資料収集も大変有益であった。
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