研究概要 |
本年度の研究成果は, これまで研究してきたEC競争法における混合合併規制の展開に加えて, 2007年11月に欧州委員会が公表した非水平合併ガイドラインの内容を分析し, その後の欧州委員会における非水平合併(垂直合併・混合合併)規制の分析手法を詳細に検討した。また, これまでの研究成果をまとめて, 531頁にわたる書籍として出版することができた。研究課題の競争者排除規制, とりわけ違法な排除行為を識別する違法判断基準をどのように設定すべきであるかについては, 正当な競争活動を萎縮させないためにも, 積極的で正当な競争活動と違法な排除行為との区別が重要であることから, 近時の重要な研究課題となっている。これについては, 米国では司法省がシャーマン法2条について報告書をまとめたり, 欧州委員会は市場支配的地位の濫用の禁止を定めるEC条約82条についてのガイダンスを公表したりするなど, 欧米でも研究・実務における分析が進んでいる。本研究の特徴は, 既に行われた行動の反競争効果を分析する私的独占規制ではなく, 合併後の反競争効果を予め分析する企業結合規制を取り上げ, なかでも, 競争者を不利な立場に置くことにより競争を著しく減殺する市場閉鎖効果が競争上の問題の1つとなる非水平合併を取りあげることにより, 市場閉鎖効果の分析のあり方を立証方法も含めて検討するものである。
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