本研究は、スウェーデンの社会サービス法における利用者の自己決定権尊重の原則に焦点をあて、その法的性格と特徴を明らかにし、わが国と比較検討を行うことを目的とする。 今年度は、第一に、研究テーマに関する文献・資料の収集・分析を行った。主として社会サービス法の制定過程に関する文書の分析を行い、同原則の内容の把握に努めた。またスウェーデン法学全般についての基礎的知識を得るため、関連法律分野の基礎的文献の収集・整理も行った。 第二に、2006年9月と07年1月にスウェーデンのエステルスンド市でインタビュー調査を行い、法の運用実態の把握と法改正等の動向に関する情報収集に努めた。インタビューは市行政職員、利用者団体等を対象に行った。またミッド・スウェーデン大学のKerstin Nordlof助教授らからは、同法の歴史や法的概念等について多くの助言を得た。 研究の結果、社会サービス法は利用者の地位・影響力を強化することを重要課題として制定され、同原則はこの一環として位置づけられることが確認できた。この点について、北ヨーロッパ学会関東部会(06年6月)などで発表した。 また同原則は、援助受給権および手続的権利の保障に基礎づけられたものであることが明らかになった。2006年改正では、資源が欠如している場合であっても個人の援助受給権を制限してはならないことを立法的にも確認した重要な改正であったため、研究を深めて論文として公表した(07年3月)。 さらに、実際に同原則を具体化し利用者の地位を強化するため、法改正をはじめ様々な取組みが行われてきたことが確認された。この点に関して、スウェーデン社会庁から出された報告書の関連箇所を試訳し公表した(07年3月)。 次年度は、現在分析途中である判例研究も含めて、同原則の法的性格と内容についてさらに解明し、研究成果を日本法政学会などで発表する予定である。
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