アメリカのプロリーグにおいて選手は労働者であるとされ、全国労働関係法(NLRA)によって団体交渉権等が付与されている。こうして労使交渉により事故補償を含めた労働条件が改善されてきた。これに対して、Fair Labor Standard Actについては、実務上、季節労働者(seasonal employee)としてその適用(保護対象)から除外されている。また、労災補償制度については、各州が立法権を有し、独自の制度運営がなされており、プロスポーツ選手の取り扱いについては、以下のように異なっている。1) 制定法による労災の部分的または全面的適用外、2) 判例法による適用除外、3) リーグ内の労災制度と州労災制度の選択制、4) リーグによる州労災給付の相殺。 MLB、NFL、NBA、NHLのいわゆるアメリカ4大リーグでは選手会とMLBとの間の合意に基づき労働協約に独自の労災補償制度が整備されており、公的労災補償制度のメリットはほとんどないといえる。これに対して、マイナースポーツあるいはリーグのプロスポーツ選手については、リーグ内の労災補償制度が不十分であることに加えて、州によっては公的労災補償制度の対象外とされている。このように、同業種にありながら低収入の選手が労災におけるリスクを自ら負うという社会公正上の問題も指摘されている。
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