本年度は、前半において、日本法における法人処罰の実体的成立要件についての研究成果をまとめて公表した。法学協会雑誌に公表した論文において、日本における学説を網羅的に分析をほどこした。また、行政判例百選において、日本のリーディングケースについて分析をまとめた。その他、日本刑法学会において、法人処罰について個別報告を行う機会も得た。 後半においては、英米法の研究に着手した。アメリカ法研究を開始するに先立ち、アメリカの判例を指導するイギリス法の研究をまとめることに関心を集中した。イギリスの判例を網羅的に収集し、分析を行った結果、従来の我が国における研究水準を超える包括的な検討をまとめることができた。しかし、近年、イギリスでは、立法レベルにおいて、法人処罰について激しい動向があり、その動向をフォローする必要があるため、イギリスの法人処罰研究を公表する形にまとめきることはできなかった。この研究は来年度に公表することを目標に、継続的に研究を行う予定である。 また、副次的な成果として、イギリスとアメリカの双方から影響を受けているオーストラリア法について、包括的に研究を行った。オーストラリアにおける従来の判例を網羅的に収集・検討する行政は従来の我が国には存在せず、資料的価値を付与できる識論をまとめることができた。また、近年の立法についても、貴重な立法資料を入手し、包括的な検討をほどこした。こちらは公表できる水準に到達しており、まもなく雑誌上にて研究発表を行う予定である。
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