本年度は、本研究の総括として、昨年度実施した質問紙調査を集計・分析し、研究成果をまとめて、学会で発表するとともに、論文として学術雑誌に投稿した。 本研究の中心的な問いは、厳罰化への支持は、厳罰化についてよく耳にする「抑止的」な関心からか、それとも、「関係的」な関心からか、であった。この点を明らかにするべく、本研究では、「厳罰化への支持は、犯罪を減らしたいという意識ではなく、社会状況の認識や社会についての見方に基づくものである」という仮説を立てて検証した。その結果、「厳罰化への支持は、犯罪を減らしたいという意識が直接的に影響するのではなく、社会状況の認識(モラル低下懸念)と社会観が影響する」という仮説モデルが支持された。したがって、一般に語られることの多い図式、すなわち、「犯罪不安の増大が、それを減らすための有効な対策として刑罰の強化を求めている」という図式は、根拠のないものであることが分かった。
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