研究概要 |
平成18・19年度の研究においては,イングランドの歴史的展開に関する研究を終え, これについては法学教会雑誌に連載を掲載することができた。そこで, 平成20年度においては, 既に発表した論文をもとに, 日本刑法学会第86回大会において個別報告を行い, 全国の刑事法学者に対して問題提起を行うとともに, それに引き続く質疑応答を行い, 研究課題に関する知見を深めることができた。その成果は, 刑法雑誌48巻3号掲載の拙稿「共犯者による捜査・訴追協力と減免的措置の付与」に公表した。 他方, 平成20年度においては, イングランドから「共犯者による捜査・訴追協力と減免的措置の付与」というメカニズムを継受したアメリカ合衆国の19世紀における歴史的展開に関する研究を進めたが, イングランドとは異なり, 手がかりとなる先行研究が極端に少ない一方, 公刊・公開されている第1次資料が極めて乏しく, それゆえ, 連邦の状況, そして全部で50を数える各州の状況を調査し, それを公刊するに耐える論文にまとめることは, 極めて難しいことであった。アメリカ合衆国の歴史的展開についての成果を公表するためには, 公刊・公開されていない第1次資料を直接的・徹底的に分析する必要があるが, そのためには, 少なくとも, 実際に現地に留学し, 更に2年程度の継続的な研究を続ける必要があることを認識した。 結果的に, 当初に掲げた研究実施計画の半分を完成したにすぎないことになるが, そうであっても, 既に一応の完成をみた研究を, 昨年度と一昨年度において, 合計350ページに及ぶ雑誌論文として公表することができたことは, 一定の評価を受けてよいものと思われる。残された部分については, 今後の研究課題としたい。
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