今年度の実績は大別して3点である 1.最判平成18年2月24日の検討とその成果の公表 これは、わが国の監督者責任(民法714条及び同709条)が親の過失責任という色彩を帯びたドイツ民法832条1項及びその沿革たる加害者委付なき訴権(actio sine noxae deditione)にも由来するものであり、従って従来一般的であった団体主義的責任の名残という理解に修正を迫る必要がある点を明らかにするとの本研究の最終目的が、現代法的な視点からも裏付けられることを明らかにする意義を持つものでる。 2.2006年度日本私法学会における報告とその成果の公表 これは、第1点目同様本研究の最終目的を現代法的視点から裏付けうるものとして、日独民法の対比から監督者責任の過失責任主義的解釈の可能性の示唆を得ようとするものである。 3.actio sine noxae deditioneの法的性質の検討 これは、中世ローマ法からドイツ普通法、そして現行ドイツ民法に至る過程における法的性質(特に責任要件としての監督者の知scientia要件)の変容を検討するにあたりその前提として、古典期ローマ法においてscientiaが、単に防ぎえた加害行為を防がなかったことを意味するのか、それとも監督者(家長)の命令をも含意するものであるのかとの議論(この点は従来わが国で充分な紹介・検討がなされていないと言えよう)の検討である。なお、この点に関しては現時点で成果の公表(又は具体的な公表予定)に至っていない。
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