研究概要 |
平成20年度の実績は、普通法に関する文献の購読により以下の点を確認しえたことである。(1) 加害訴権が継受されなかうたことから. D. 9. 2. 27. 9, 9. 2. 27. 11(賃借人の奴隷による失火)又はD. 1. 18. 14(精神病者による殺害)により第三者の行為についての責任の間隙の補充が試みられたこと、特に後者の法文から第三者の不法行為を防止する一般的義務(阻止義務obligatio impediendi)を展開されたこと、(2) この阻止義務は、責めを負う者が行為者の行為を知っていることについての責任(scientia責任)よりも包括的・統一的であり、過失により知らなかった場合にも存在したこと、(3) 両親の責任はobligatio imediendiの一部として把握されたこと、(4) これは継受後家父権patria potestasが特に自然法思想の影響によりその保護的・義務的側面が強調される(家父は第三者に対しても義務を負うとされる)に至ったことに由来すると見うること、(5) 絶対主義国家思想の下、自然法思想の影響を受けたプロイセン一般ラント法ALRにおいて、scientia責任(第1編6章59条、第2編2章142条)と並び監督・教育義務違反責任(第2編2章143条)が規定されるに至ったが、両者は異なるものと考えられていたこと、(6) 19世紀普通法では自由国家思想の下、教育義務と監督義務が分離されたものの、学説におけるscientia責任と監督義務違反責任の関係の理解は明らかではなく、判例が両者を均等化していったと言えること、である。但し、これらの点はいずれも、現段階では公表するに至っていない。
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