研究概要 |
本研究の目的は,民法が想定する保証と近親者保証の実態との間に齟齬があることを前提として,近親者保証の実質的機能に配慮しつつ,近親者保証人の意思決定過程及び保証引受の経済的合理性を考慮しながら,近親者保証人の保護のあり方を探求することにある。 本年度は,保証契約の効力または保証人の責任制限について問題となったわが国における裁判例についての分析を進めた。また,2008年3月に実施したフランス・ドイツの現地調査において,近親者保証の保護のあり方について,主に研究者へのヒアリング調査をおこなった。 また,保証人が実際に代位弁済した後の求償権(事後求償権)にも光を当て,求償権の時効管理のあり方についても検討した。中小企業金融においては,人的担保として,従来,信用保証協会による信用保証と近親者保証とを同時にとって保証人間の負担割合を0:10としたり,信用保証協会が主債務者に対して獲得する求償権を保証するために中小企業の経営者自身及び近親者保証がとられてきた。このような場合に代位弁済した保証人の獲得する求償権の時効管理が問題となる一例として,物上保証人に対する不動産競売手続の開始後に代位弁済した委託保証人(信用保証協会)がなした差押債権者の地位承継の申出が,求償権の時効を中断するか否か,という問題がある。そこで,この問題に関する最高裁平成18年11月14日第三小法廷判決民集60巻9号3402頁をとりあげ,同判例が,原債権の差押債権者の地位承継の申出という行為に着目し,この行為が,原債権について原債権者にすでに生じていた時効中断効を承継する側面と,求償権の行使「的」な側面があることを理由に,本来ならば,求償権とは別個の債権である原債権の差押債権者の地位承継の申出を求償権に基づく差押え(民法147条2号)に準じるものと評価することによって,求償権の時効中断効が正当化されることを明らかにした。
|