研究概要 |
本研究の目的は, 民法が想定する保証と近親者保証の実態に齟齬があることを前提として, 近親者保証の実質的機能に配慮しつつ, 近親者保証人の意思決定過程及び保証引受の経済的合理性を考慮しながら近親者保証人の保護のあり方を探求することにあった。 本年度は、第1に、フランスにおいて、現在、保証人保護のために用いられている比例原則の導入の背景および判例上の比例原則と立法における比例原則の要件・適用範囲・の相違等、また、消費法典によって要求される保証契約締結に関する方式、債権者の情報提供義務に関する議論を検討した。第2に、ドイツにおける良俗違反以外の手段による保証人保護手段として存在する、普通取引約款規制(特に、包括根保証約款に対する不意打ち条項規定の適用)、撤回権(訪問販売)の機能および適用のされ方について検討した。第3に、保証契約の効力または保証人の責任制限について問題となったわが国の裁判例の検討を通じて明らかになった我が国における保証人保護のなされ方と、先般の法改正の影響を探求した。これらの検討を総合することによって、保証人の保護が要請されるようになったそもそもの背景を探求した。そのうえで、各国における種々の保証人保護の法理とそれらがカヴァーする範囲を明らかにすると同時に、とりわけ我が国において、保証人が保護されるべきであるにもかかわらず、その手当がなされていない場面を明らかにし、その間隙を埋めるために適した理論を構築するために、比較法研究からの示唆を得た。 本年度は更に、債権管理の観点から、保証制度と時効制度との交錯する点についても検討を加えた。
|