今回の研究テーマは、日本の民事裁判の証明度原則を高度の蓋然性から証拠の優越原則に置き換えることによる民事訴訟手続全体への影響であり、とりわけ『当事者が証明活動を行う際あるいは裁判所が「裁量権を行使」したり「心証を開示」したりする際の規範的根拠としての意義』を検討することを「第一の目的」とし、また、当該研究により、翻って民事の証明度を「優越的蓋然性」にすることの意義を確証することを「第二の目的」としているが、【平成18年度】は、今回の研究の準備段階として、わが国での手続裁量や心証開示の理論全般について関連書籍を収集し検討を始め、またドイツやアメリカのみならずスカンジナビア系(フィンランドやスウェーデン)といった外国における当者の証明活動と裁判所の役割分担に関する理論や実際の状況の検討を開始した。 具体的には、国内の裁判所の手続裁量の範囲を規範化しようという動向に関する論説や論集をはじめ、和解や通常の判決手続における裁判官の心証開示についての理論形成に関する著書や論文を検討した。また、裁判官が積極的な役割を担うドイツや裁判官が後退的な役割を担うアメリカにおける当事者の証明活動及び裁判所の裁量に関する文献と共に、独自の見解を持つスカンジナビア系の国の同様の文献をいくつか入手して、来年度の本格的な調査の準備を行った。
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