本年度は、研究計画に則り、図書資料の収集・検討を継続するとともに、ドイツに資料収集及び調査のために渡航した。現地では、ミュンヘン大学やバイエルン消費者センターを訪問し、資料の収集・購入を行い、また消費者センターの相談員やドイツ及び日本の状況に詳しい弁護士に具体的な課題を設定してインタビューを試みた。今回の調査において得られた興味深い成果としては、近時の日本における高齢者被害などを題材に、現在日本において議論されている契約解消権の拡大などについて意見を求めたところ、否定的な意見が示されたことである。例えば、判断力不足者による不相当な内容(加量販売など)の契約について取消権を導入するといったことについては、相談員からは、どの程度で判断力不足とされるのか、何が不相当かについて疑義があり、そのような取消権の導入には疑問があること、私的自治や契約自由との関係に配慮すべきことが指摘され、弁護士からは、取消権を特定領域(特商法対象領域等)で導入するといったやり方よりも、公法と私法(取締法規違反の私法上の効力の問題)とのよりよき結合を民法レベルで図ったほうがよいのではないか、といった意見が示された。消費者保護法の展開の仕方には、国民性や歴史も関連していることが伺われ、日本のアプローチの独自性についても深く研究する必要を感じた。現地で入手・購入した資料については検討を継続中である。また、本年度は、研究テーマの一部に属する「消費者契約の取消と清算」という問題について、もっぱら邦語文献に依拠した研究成果を発表した。論文の最後に指摘している課題について、今後比較法を踏まえた研究を進める予定である。アメリカ法の研究部分に関しては、アメリカのナショナル消費者センターにアクセスし、資料購入を行うとともに、定期的にnewsreportsを郵送してもらい、資料情報収集をすすめた。
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