本年度も、研究計画に則り、図書資料の収集・読解・検討を継続した。この間、本研究テーマに関連する割販法および特商法の改正が行われたが、この法改正の審議には委員として参加し、契約解消にかかわる見解の提示にあたっては、本研究が活かされている。また、今回の日本の法改正に関し、ドイツMunchen大学のStephan Lorenz先生に評価・意見を求める機会を自主的に設け、昨年行った実務家中心の調査とはまた違った視点からの示唆を得ることができた。具体的には、日本の過量販売撤回権や中途解約権などの制度はドイツでの導入は不要と考えるが、これは類似の被害事例に対して別の手段で十分に対応可能であると考えられるためであり、アプローチが異なるといった意見を伺うことができた。そして、今年度行った文献検討の結果としては、ドイツ法の領域では、中途解約をめぐる紛争について文献の検討をすすめ、ドイツでは、この問題に対し、主として不当条項の規制という観点から、第一に、長期存続期間条項の規制、第二に、解約告知権排除条項の規制、第三に、清算条項の規制という三つのレベルの規制が行われていることを立法・判例理論において確認することができた。また、アメリカ法の領域では、州法のレベルにおいて連邦法を超える範囲でクーリング・オフ制度が導入されていること、中途解約関連の紛争については、サービス契約を中心に、州の制定法などに存続期間制度などが存在し、また契約法のレベルでは附合契約における清算・損害賠償の予定条項規制の問題として議論されていることなどを確認することができた。本年度は、これまでの検討もあわせて、本研究テーマに関する意見のとりまとめにかかった。
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