研究課題
平成18年度においては、特にドイツ法に重点をおいた検討を行った。具体的には、以下の通りである。(1)18世紀末から19世紀後半にかけてのドイツの民事訴訟制度の展開につき、とくにそれが結果的に生み出した、手続主宰者の面においても、手続の進行の面においても極度に一元的な手続構造に着目して、それが裁判官の役割に与える影響を検討した。すなわち、そうした近代ドイツ型の手続構造は、19世紀を通じて進められたある種の効率性追求の結果としてみることができるものであり、そこには種々のメリットが伴うことは否定できないが、他方で、このように裁判主体の間に機能的な区分が存在しない結果として、裁判官というのは手続内においていわばオールマイティな存在であり、それと同時に、ある意味では非常に危険な存在であるということにもなる。その結果、ドイツ型の手続においては、上訴制度を通じたコントロールが重要となり、英米型の手続が、第一審手続内部において横のレベルでの区分を設けて判断の適正を確保しようとするのに対して、ドイツ型の場合には、第一審手続の上に、事実問題の再審理を伴う第二の包括的な審級をおいて、いわば縦の区分によって判断の適正を確保しようとするものであるといえる。(2)2002年のドイツ民事訴訟法改正は、控訴審の機能に対して大幅な限定を加え、これは、第一審手続の比重を高めるという意味においては、英米型の手続への接近を意味するものであるようにも見えるが、一元的な第一審手続に対して包括的な上訴の可能性が確保されていることがそこでの解決の正当性を確保していたのだとすれば、こうした上訴制限は、第一審手続の構造変革を伴わない限り、そこで生み出される解決の正当性を掘り崩すことにならざるを得ない。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
法の同化:その基礎、方法、内容(リーゼンフーバー=高山佳奈子編)
ページ: 9
Rechtsangleichung : Grundlagen, Methoden und Inhalte (RIESENHUBER, Karl/TAKAYAMA, Kanako (Hrsg.))
ページ: 10