本年度においては、特にドイツ法に重点をおいた検討を行った。具体的には、以下の作業を進めた。 第一に、18世紀末から19世紀後半にかけてのドイツの民事訴訟制度の展開につき、とりわけ、同時期におけるローマ法学の発展の影響という視角から、分析を試みた。その結果、ローマの民事訴訟手続に関する認識の深化が、同様の手続構造をドイツに導入する、という形での受容を生み出したわけではないことが確認できたが、そうした特異な対応の背景にある事情については、なお研究が必要である。 第二に、19世紀以降のドイツにおけるいわゆる民事訴訟の目的論の展開について、とりわけ裁判官による法創造をどのように位置づけるかという点を中心に、分析を試みた。この関係では、法体系の一元性・一貫性をどの程度重視するかという問題が、一つの分岐点となることを確認できた。この点については、英米法との対比を念頭に置きながら、さらに検討を進める必要がある。 第三に、2002年のドイツ民事訴訟法改正が本研究との関係でもたらしたインパクトについて検証を行うため、夏季休業期間を利用して、ドイツに渡航して所要の調査を実施するとともに、資料等の収集を行った。その結果、条文上の大きな変更にもかかわらず、実務上の運用は必ずしも大きく変化したわけではないことが窺われたが、この点についても、なお見守っていく必要があろう。 上記各作業については、上述のようになお解明すべき点が多く残されており、論文等の形で成果を公表するには至っていないが、次年度以降引き続き研究を進め、成果の公表につなげたいと考えている。
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