本研究は、契約締結後に事情変動が生じた場合において、裁判所が契約内容を改訂することがどのような理由から認められるのかという問題、および、裁判所による改訂が認められるとすると、どのような場合に、どのような形で改訂を行なうべきなのかという問題を明らかにすることを目的としている。 本年度は、このような目的にとって示唆に富む外国法について検討を進めた。具体的には、ドイツにおける議論について調査・分析を進めるとともに、アメリカにおける多様な議論についても調査を開始した。ドイツにおける議論のうち、本研究にとって重要なものとして、いわゆる行為基礎論をめぐる議論と、再交渉義務をめぐる議論が存在する。本年度は、行為基礎論をめぐる議論において、裁判所による契約の改訂がどのように正当化され、位置づけられているのかという点について検討を進め、その成果を2007年3月に公表した。さらに、再交渉義務をめぐる議論についても、すでに重要な議論に関する調査を終えており、次年度の前半に具体的な成果として公表する予定である。アメリカにおいては、法律学の古典的手法を用いて裁判所の介入について検討を加える研究のみならず、経済理論(とりわけ契約理論、ゲーム理論)などの知見を踏まえた先端的な議論が有力に示されるに至っており、議論の状況は複雑である。本年度は、こうした多様な議論を調査・整理するという作業にとどまってしまったが、日本法における議論に接続するための端緒を見出すことができた。次年度に、ドイツにおける議論と接続する形で、その成果を公表する予定である。
|