本研究は、契約が締結された後に事情の変動が生じた場合において、裁判所による契約の改訂が、どのような正当化根拠に基づいて、どのような要件の下で認められるのか、という問題の解明を目指すものである。これまでに承認されてきた、「事情変更の原則」は、契約を当初の内容で維持することが信義則に反すると考えられる場合に、契約の内容を制限する法理として位置づけられてきた。このような理解に替えて、本研究では、ドイツ法、および、アメリカ法における議論の分析を踏まえて、当初の契約において引き受けられていないリスクが実現した場面における、契約当事者の自律的な規範形成を支援する制度として、「契約改訂規範」を位置づけるべきことを提唱した。
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