"権利の無断使用(特許権の侵害)"に対して不当利得制度を用いた場合に、特許権者をいかに救済できるのかが、本研究の課題であった。 ドイツの判例・学説を中心に詳細に検討した結果、特許権者は特許権侵害者に対して、特許権の使用可能性という利益を請求することができると考えるのが、ドイツにおける現在の支配的見解であり、日本法においても重要な示唆を与えうるものであることが判明した。 もっとも、使用可能性という利益は、無形・無体の利益であるため、価格算定を行う必要があり、ここでは算定基準をいかに考えるかが問題となる。返還義務の対象の問題と同様に、ドイツの判例・学説を中心に検討した結果、客観的市場価格を基準とすることが最も妥当であることが判明した。 これにより、不法行為制度に限らず、不当利得制度によっても、特許権保護を全うできる理論構成を提示することができ、今後の実務にも参考になることが期待されうる。
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