平成18年度は、ネッティングのうち、ペイメント・ネッティングおよびクローズアウト・ネッティングに関する法的構造を明らかにし、併せて、ISDA2002年版マスター契約におけるネッティング条項に関する検討を行うことに従事した。研究成果として、「ネッティング契約の相殺構造-ISDA2002年版マスター契約におけるクローズドアウト・ネッティング条項を中心に-」(平成17年度基盤研究(B)「非典型担保の実態・解釈・立法研究方法」(研究代表者鳥谷部茂広島大学教授)))をとりまとめ、ISDA2002年版マスター契約におけるネッティング条項の相殺構造と従来の相殺理論を適用することの意義と限界について分析を試みた。今年度中に、同論文を基礎に、ドイツ法における議論、マルチラテラル・ネッティング条項に関する議論等を補充し、公表する予定である。また、資金決済システムにおけるネッティング合意に関する基礎的研究として、銀行取引約定書ひな型廃止後の各銀行の銀行取引約定書の改訂動向を取りまとめ、「銀行取引約定書ひな型廃止後の銀行取引約定書改訂動向(1)(2・完)」(鹿児島大学法学論集41巻1号、同2号)として公表した。さらに、平成18年度法社会学会において、右銀行取引約定書の改訂動向のうち、相殺予約条項に関して報告を行った。同報告において、相殺予約条項に関する従来の判例学説の整理、全銀協による留意事項の分析、各銀行における留意事項を含めた対応状況等を分析した。
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