研究概要 |
本年度は, 技術的保護手段を用いた情報の囲い込みの問題を考察した。コピー・プロテクトやアクセス・コントロールといった技術的保護手段の登場と, それらの回避行為規整の立法に伴い, デジタル情報財の流通において, 所有権に基づく情報のコントロールと類似の問題状況が登場しつつある。例えば, 著作権の保護期間が切れた著作物であっても, 技術的保護手段という「鍵」をかけることにより, 本来, パブリック・ドメインである情報をコントロールすることができる。これは古い絵画や彫刻などが美術館等に展示されている場合に, 私たちが入館料を支払う局面と類似するのであり, かかるデジタル環境下における問題を分析する際にも, 有体物の所有権と知的財産権の関係を参照することが必要である。 その結果, デジタル環境における情報取引の問題と, 有体物の所有権と知的財産権の関係という2つの問題は, 情報へのアクセス制限という点で共通し, 営業秘密などの古典的なアクセス制限方法と共通点を通することが明らかにされた(『不正競争防止法研究』の論稿参照)。また, この問題の射程は, 頒布権や公貸権など, 現代社会における私たちの情報の受容とも関わることも明らかにされた。 これらの研究の成果は, 主に, 知的財産研究所編『デジタル・コンテンツ法のパラダイム』(雄松堂出版, 2008年)に示されている。
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